2025年投資法新制度 – ERC先行取得のメリットと、制度・実務対応を徹底解説【WEB限定記事】
1. 2025年投資法の改正点-IRC取得前に現地法人の設立が可能に
ベトナム国会は、外国投資家による投資の柔軟化と手続簡素化を目的に「2025年投資法(法律第143/2025/QH15号)」を制定し、2026年3月1日に施行しました。本改正における最大の注目点は、投資登録証明書(IRC)の取得前であっても、先行して現地法人を設立し、企業登録証明書(ERC)の交付を受けられるようになった点です。もっとも、この新制度を実務でスムーズに運用するには、投資法だけでなく、企業法や外国為替管理法令との整合性を図る制度設計が欠かせません。
2. 政令第96/2026/NĐ-CPによる具体的な投資手続
詳細を定める政令第96/2026/NĐ-CPでは、この新制度の具体像と、外国投資家が選択できる手続ルートが明確化されました。IRC取得前に現地法人を設立する場合、外国投資家はまず企業法等に基づき法人を設立します。その上で、設立された現地法人が主体となって自らの投資プロジェクトに関するIRCを取得する流れとなります。このスキームでは、現地法人が投資手続を行うため、IRC上の「投資家」欄には外国投資家ではなく現地法人の名称が記載されます。一方、従来どおりIRCを先に取得するルートでは、外国投資家自身が「投資家」として記載されます。
3. ERC先行取得を選択する場合の主な制限
一方で、政令第96/2026/NĐ-CPは、ERC先行ルートを選択した場合の重要な制約も設けています。具体的には、設立された現地法人は設立日から12か月以内に、登録事業に適合するプロジェクトのIRC取得を完了しなければなりません。また、IRCが発給されるまでは新たな事業内容の追加や、実際の投資プロジェクトの開始は認められません。なお、12か月以内にIRC取得が完了しなかった場合の法的ペナルティ等については、現時点で明確な規定がありません。資金面においては、現地法人の定款資本金をプロジェクトの投資資本金と必ずしも一致させる必要はなく、IRC記載の事業スケジュールに応じて他手段で資金調達することも認められています。
4.ERCを先に取得する制度の法的位置付けと実務上の意義
留意すべきは、先行取得したERCはあくまで「法人格」を付与するものに過ぎず、IRCの代用にはならない点です。そのため、IRC取得前の事業開始は固く禁じられています。しかし、早期に法人格を獲得できるメリットは絶大です。オフィス契約、組織体制の整備、人材採用、パートナー企業との交渉など、事業開始に向けた準備を大幅に前倒しで進められるようになります。さらに本制度は、ベトナムの投資環境が従来の「事前の厳格審査」から、「投資家の自己責任に基づくコミットメントと事後モニタリング」を重視する方向へ転換しつつあることを象徴しています。ただし、外国投資家は引き続き、外資参入規制や関係業法、国際約束に基づく各種条件をクリアしなければならない点には注意が必要です。
5.行政機関における足元の実務運用
実際の現場では、ハノイ市やホーチミン市の事業登録機関において、IRC取得前の現地法人に対するERC発給の実務がすでに始まっています。また、政令第296/2026/NĐ-CP(企業登録に関する政令第168/2025/NĐ-CPの改正政令)により、IRC取得前の法人設立時には企業登録申請書へのIRC写しの添付が不要となりました。その代わり、申請書には「外国投資家に適用される外資参入条件を遵守している旨」の誓約の記載が義務付けられています。
6.おわりに:日本企業に求められるアプローチ
ERCの先行取得を認める今回の法改正は、ベトナム進出を目指す日本企業にとって、事業立ち上げの自由度と機動力を格段に高める追い風となります。ただし、このメリットを最大限に享受するには、IRC取得や外資参入条件のクリアなど、クリアすべきステップを計画的に進める視点が不可欠です。制度の趣旨と実務上のポイントを正確に把握し、戦略的な準備を進めることが、ベトナムビジネス成功の鍵となるでしょう。
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