操業に必要な設備・ITサービス
工場が竣工した後は、生産に必要な機械や設備を搬入すると同時に、工場の管理運営、従業員の就業に必要な資材・サービスを整えていくことになります。ユーティリティーや環境の設備は、工場建設の一部としてゼネコンが取り纏めることも多く、メーカや設備グレード、サービスのグレードなども推薦のもとに取り決められていきますが、既存工場での経験をもとに自社でのこだわりがある場合には、前もってメーカー、サービスプロバイダーとコンタクトし、工場建設と並行して、導入の計画を立てていくことと良いでしょう。
製造設備,工場設備
製造業で進出する際には、生産ライン・製造設備のほかに、品質保証に必要な測定機器、周辺の治類や備品類など多岐にわたる調達が必要となります。立上げ時には現地情報も少ない為、本国もしくは第三国から持ち込むというのも一つの選択肢ですが、据付、メンテナンス、消耗品の供給、更にはソフトの言語対応や新しく採用するベトナム人スタッフへの取り扱い説明、技術サポート等を考慮すると、ベトナム現地で調達するというのも検討すべき選択肢の一つとなります。特にベトナムで、既に販売サービス網を構築しているメーカーや商社では、時に発生する些細なトラブルやベトナムならではの悩み事への対処方法をノウハウとして持っていることが多いため、操業開始時においては良い相手となります。
製造設備などは本国や他の海外工場から中古設備を移設するという選択肢もありますが、中古はエネルギー効率やメンテナンスの面で運用コストが上がる傾向にあるため、中長期的な視点では少し注意が必要です。また中古設備の持ち込みは申請取得するIRCの中身と整合する必要があることも注意したい点です。尚 、ベトナムは中国やタイなどのこれまで発展を遂げた各国と同様に、経済成長に応じて人件費は必ず上昇していきます。現時点ではメリットとの見方がまだ優勢のベトナムの賃金水準も、今後はその限りではなく、この先の3年、5年という時間では労働集約的なプロセスは少しずつ淘汰されていく傾向にあります。その後にはやがてベトナムでも「省人化・自動化」といラキーワードが主流になることが予想されますので、進出後のベトナム工場が特続的に受注獲得と利益確保ができるよう、将来のオペレーション・設備構成を想像しながら進出時の設備導入を計画することをお勧めします。
環境・ユーティリティー関連設備
ベトナムでは工場建設の前に、計画する製造工程の環境負荷レベルに応じて環境評価 (EIA)の申請を行う必要があります。工場排水や大気排出は必ず確認を受ける項目となりますが、それら許認可の取得は複雑で、通常は専門のコンサルタントを通じて対処することになります。また、省ごとに若しくは担当官ごとに解釈の差異があるため、環境対策の肝となる設備導入においては、早い段階で専門メーカーに相談することが近道となります。
ベトナムの排水基準は近年では国際水準に近付きつつあり、それに適合した排水処理設備の導入が重要となります。特に製造工程で水を使用する工場は、まずはその団地の排水基準を確認し、その上で関連するメーカーに相談をすると良いでしょう。工業団地は通常、団地として排水処理施設を所有しており、工場排水はテナントが一次処理をして団地に排出し、団地はそれを二次処理(中央処理)して自然に放出することになります。また、団地インフラから供給される工業用水の水質は一般的には高くはありませんので純水設備の導入が一般的です。製造プロセスの品質担保のほかに、製造装置や配管システムにおけるスケール形成や腐食の発生を防ぐことから設備の寿命を延ばし、メンテナンスコストを削減することにもつながります。昨今では自社やクライアント企業のESGポリシーに応じて環場配慮型・循環型の工程を工場立ち上げのタイミングで検肘することも選択肢の一つかと思われます。
産業廃棄物
ベトナムでは工場から排出される廃棄物は主に一般ごみと産業廃棄物に分類され、産業廃棄物や有害物の管理は、ベトナム環境保護法により詳細に規定されています。産業物は、製造プロセスや工場の運営から生じる廃棄物で、化学薬品、廃油、金属くず、塗料残渣などが含まれます。 産業廃棄物は、適切な処理技術を持つ認可された廃棄物処理業者によって収集され、リサイクル、焼却、安定化、固化、埋立処理などにより処理されます。
有害物については、排出者(工場)は処理業者に廃棄物を引き渡す際にマニフェスト(処理証明)を使用し、これに廃棄物の種類、量、引き渡し日などの詳細を記載します。処理業者は、このマニフェストに基づいて廃棄物を処理し、処理完了後に証明書を工場に返却することになっています。企業の社会的責任の観点からも、最新の環境基準に基づいて安全な処理プロセスを確立し、廃棄物を適正に処理する業者に委託することをお勧めします。
オフィス機器やIT・通信環境の整備
日本とベトナムではインターネット環境も異なります。例えば、インターネットが不安定になる頻度は日本よりも高く、特に国外(日本)との通信速度が上がらないケースもあります。ベトナムの工業団地には団地インフラとして光ファイバーが引かれていることが一般的ですが、別途プロバイダー契約を行う必要があります。
安定した通信環境と効率的なイントラ環境は工場運営の基本となりますが、そこに加えて、セキュリティ対策、生産管理システムの運用、更にはIoTデータの活用など将来の工場スマート化に向けた計画は、いずれも立ち上げ時のITインフラの整備状況が肝となります。最近では、ベトナムにおいてもサイバー犯罪も発生しています。ランサムウェアによる被害が起き、操業や生産に影響を及ぼしたケースもあります。工場やオフィスを設計する早めの段階で、専門のIT企業に相談することで、安定的で信頼できるIT環境の導入がスムーズに進み、また起こりがちなトラブルを未然に防止することができます。
業務で使用する複合機などは、購入かリースの選択ができます。「キャノン」「コニカミノルタ」「シャープ」「富士フイルム」など日系大手メーカーがベトナムで販売を行っています。また最近では、複合機以外にも、電子サインシステムの導入をサポートできる会社もあります。また、オフィス家具については、ローカルでオーダーメイドするケースもありますが、日系の大手オフィス家具メーカーも多数ベトナムで販売していますので、日本製のオフィス家具を揃えることもできます。最近では日本製の、長く使えて、疲れにくさにも対応した椅子なども人気です。
セキュリティ
製造工場においては高価な設備や製品、原材料などを盗難から守り、場内の安全性を確保する必要があります。外部の警備会社は、現地に即した警備ノウハウを有し、訓練を受けたスタッフを擁していますので、万一のトラブルや事件の際にも迅速かつ適切な対応が期待できます。また監視カメラの設置に始まり、センサーによる機械警備システムも一般化していますので、工場のオペレーションと求める監視レベルに応じて様々な対策を講じることが可能です。工場には守衛所を設置しますが、そこの管理・運営を検討する段階で警備会社とコンタクトし、現地の事情に精通した専門業者に委託することをお勧め致します。
保険
ベトナムにも日本同様「公的保険」はあるものの、基本的にはローカル病院が主となり、日系企業の多くが、民間医療保険に法人契約をしています。主に外国人が利用するインターナショナルクリニックや、日本語が通じる日系クリニックなども適用となり、異国での急な病気の際にも安心です。その多くが、キャッシュレス(または一部のみ個人負担)サービスとなっていることが多く、保険カードやアプリとパスポートの提示で、キャッシュレス決済を受けられます。また法人契約していない場合も、現地で個人加入することもできます。保険を取り扱う通訳会社が、病院予約や診察時の通訳に付き添ってくれることもあります。また対象外となる項目も、保険によってはあり、歯科は対象外など契約条件について事前の確認が必要です。