2026年消防法の動向とその対応について【WEB限定記事】

2026年消防法の動向と企業対応の要点

 2026年7月に施行されたベトナムの新消防法では、建物や車両に対する「消防完了検査(Nghiệm thu)」が廃止され、公安省による事前の設計審査と事業者自身による自主完了検査へと一本化されました。これにより行政手続きは簡素化され、工場やオフィスの稼働開始までの時間が大幅に短縮されましたが、その分「事業者の自己責任」が極めて重くなっています。

 直近の大きな改正は2025年7月施行の「消防・救助法」であり、住宅兼店舗の防火区画設置や電気設備管理の厳格化、違反罰金の大幅引き上げ、自衛消防組織の設置義務化などが盛り込まれました。これらにより企業は設計段階から最新基準(QCVN 06:2022/改正1:2023等)を満たす必要があり、違反時には高額罰金や操業停止のリスクがあります。

工事種別ごとの対応の違い

●オフィス内装工事:
軽微な間仕切り変更はビル管理会社・組合への届け出のみで済みますが、大規模な区画変更や避難経路変更は公安省の設計審査が必要です。工事完了後は事業者と施工業者による自主検査で稼働開始できます。

●新工場建設:
消防設計審査を通過しなければ建設許可が下りず、施工後も警察検査はなく事業者が自主検査を行い、その記録を建設局の竣工検査に組み込みます。

●増改築:
規模によって審査の要否が分かれ、大規模改修では既存部分も最新基準への適合を求められるケースが多発しています。

火災発生時における4つの厳格化リスク

火災発生時のリスクは従来以上に厳格化されました。
①経営陣への刑事責任追及が迅速化し、虚偽報告や基準違反があれば即座に訴追される可能性が高い
②火災保険の不払いリスクが増大し、点検記録の不備があれば保険金が支払われない事例が続出
③工業団地全体への損害賠償請求や操業停止の連鎖リスク
④自衛消防隊未設置など現場対応不備に対する厳罰適用

 これらを踏まえ、企業は第三者監査の導入や点検記録のクラウド保存など、「証拠の要塞」を構築することが推奨されています。

過去の承認図面と経過措置の注意点

 過去承認済みの図面は原則有効ですが、増改築や用途変更、定期検査での不備指摘、公安省の特別監査などでは最新基準への適合を強制される例外があります。特に「古い承認があるから大丈夫」という過信は危険であり、外部専門家によるギャップ分析や自主的な改善計画の作成が免責の証拠となり得ます。
 経過措置として、2026年6月以前に設計審査承認を得ていた図面はそのまま有効ですが、工事完了時の警察検査は廃止され、自主検査に切り替わります。完了検査申請中だった案件は6月20日以降受理されず、未完了工事は新法が全面適用されます。施工業者の手抜きリスクも高まるため、事業者による厳格な監督が不可欠です。

まとめ

 総じて、新法は行政効率化を進めつつも事業者責任を最大化し、監査リスクを増大させています。ベトナムの度重なる急な法改正に対応していくことは、企業にとって非常に難しい課題であると考えます。しかし、これまでの経験からも、必要な消防措置を十分に講じていない企業が多く存在し、実際に火災発生時に重大な問題へ直結するケースが少なくありませんでした。そうした背景を踏まえると、確かに一方的で急な法改正ではあるものの、日系企業様におかれましては、このタイミングで本当に必要な安全対策を講じることが極めて重要だと考えます。
 また、各消防当局の担当者によって対応の厳しさや提案内容に差があり、過剰な仕様を求められる場合もあれば、減額案を提示される場合もあります。監査の厳格さも担当者次第で大きく異なるため、企業側としては過去の消防対応を一度整理し、今後のリスクを軽減するために信頼できる消防コンサルタントへ相談することが有効です。専門家の助言を得ることで、過剰投資を避けつつも必要な安全対策を確実に実施でき、監査対応にも備えることができます。
 安全性の確保と事業継続のために、ぜひこの機会に消防対応の見直しをご検討ください。

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