輸出・投資・消費の好循環と、新たな事業機会の創出へ【Vol.21-2026.3掲載】

  日本貿易振興機構 (ジェトロ)
ホーチミン事務所 所長
岡部 光利

ベト ナ ムマクロ経済~2026年の動向について

基本的には 2026 年も安定成長が続くと考えています。ただし、政府が掲げている 「10%以上の成長」 については、2045 年までに先進国入りするという目標を見据えたものであると思いますが、野心的な数字という印象です。
目標の達成に向けては、以下の点がポイントとみています。

輸出 対米動向を注視
最大の輸出相手国である米国向けの動きに注目が集まります。 2025年の対米輸出額は前年比で約 28%増と好調であった一方、トランプ大統領は今年 2 月、米国連邦最高裁判所による相互関税の違憲判決を踏まえ、代替手段として全世界に一律 10%の追加関税を課すことを表明しました ( 2 月23 日時点)。これまで徴収された関税の還付がどうなるのか、新たな関税措置が発動されるのかなど、引き続き動向を注視していく必要があります。

投資 行政手続きの迅速化が課題
「外国投資」について、日本の製造業による新規投資のご相談は一服感がありますが、サービス業からのご相談は引き続き旺盛です。また、製造業でも拡張・多角化投資の動きは見られますが、省・市の再編に伴い許認可手続きが滞っているケースが散見されます。一刻も早い対応を望みます。「公共投資」については、空港、港湾、鉄道、高速道路などの主要なインフラ開発が今後は成長のけん引役として、より一層重要な役割を果たしていくものと思います。

消費 2025年は活況も今後の動向に注目
2025 年の消費者物価指数上昇率 (CPI) は前年比3.31%と国会が定めた目標(4.5%以内)に収まり、過度なインフレは抑制されました。それを背景に、2025年の小売り・サービスの売上高は前年比 9.2%増と好調でした。
他方、CPI への寄与度が高い住居費、建材費、食品、飲食などの動向には引き続き注視が必要だと思います。

目標達成への鍵 民間経済の開発
政府目標の 10%以上の成長を達成するには、「堅調な米国向け輸出」、「迅速な投資許認可手続きの履行と公共投資の拡大」、そして 「インフレの抑制」は欠かせません 。加えて、2025 年 5 月 4 日に公布された政治局決議 68 号
「民間経済の開発」も重要になります。同決議では民間企業を「国家経済の最も重要な原動力」と位置づけており、大企業から中小企業、スタートアップまで幅広い企業の育成や、イノベーション分野の発展を推進するとしています 。 10%以上の成長を達成するには輸出、投資、消費が三位一体となり好循環を生み出すとともに、民間企業の活力を経済成長に結びつけていくことが必要不可欠だと思います 。

ホーチミン市の展望について

ホーチミン市は 2025 年 7 月の省・市再編に伴い、旧ビンズオン省および旧バリアブンタウ省と合併し人口 1,400万人を有するメガシティとなりました。これにはチャンスと課題の双方が存在すると考えています。

チャンス 産業の明確化と多様化
単に人口が増えるだけでなく合併を機に、各々が担う産業が明確化・多様化したことが強みだと思います。「ハイテク産業・サービス・国際金融」を担う旧ホーチミン市、「ハイテク産業」
を担う旧ビンズオン省、そして「海洋産業・観光・物流」を担う旧バリアブンタウ省と、発展の可能性がある産業が明確化・多様
化したというのが新しいホーチミン市の強みであり、チャンスだと思います。

課題 行政手続きの煩雑さと法制度の未整備
他方、課題としては、「行政手続きの煩雑さ」と「法制度の未整備・不透明な運用」が挙げられます。ジェトロが 2025 年11 月に発表したアンケート調査結果によると、ベトナム進出日系企業においてはこれらが投資環境上の課題の 1位と2 位に挙がっています 。ホーチミン日本商工会議所 (JCCH) は 2025年 12 月にホーチミン市人民委員会とラウンドテーブルを実施しましたが、この場でドゥオック委員長より日系企業の課題を解決するとの強い決意が示されました。今後これらの課題が解決することを期待しています 。

今後のチャンスについて

拡大する消費市場を背景に、飲食業や小売業、販売会社などでは引き続き事業機会が続くと思います。 加えて、注目しておきたい 3 つの視点を挙げたいと思います。コンプライアンスの問題が発生する原因ベトナムの日系企業で不祥事が発生する背景には、図面の 3 つの要素が密接に関係しています。

1.ベトナムスタートアップ企業と日本企業の協業連携

当事務所では、ジェトロ・ハノイ事務所と共同でこれまでフィンテックや EC 分野など約 300 社のベトナムスタートアップ企業を取材し、ベトナムでのビジネス展開を目指す日本企業に紹介してきました。また、 ベトナムスタートアップ企業を紹介するピッチ・マッチングイベントも実施しています。2025年はベトナムや ASEAN で伸びている分野、例えば二輪車や EC、教育分野において日本企業がベトナムスタートアップ企業に出資、協業する事例が見られました。新しい技術やネットワークを持つスタートアップ企業との協業は、日本企業がベトナムでのビジネスを展開を図る上で有効なツールになると考えます。

2.日本のスタートアップ企業による社会課題解決

日本のスタートアップ企業によるベトナムの社会課題解決にも注目しています。 南部の各省・市を訪問すると、必ずと言ってよいほど農水産業の高度化に関する協力が求められます。具体的には、エビの養殖技術や生産性の向上、水田から排出されるメタンガスの削減に向けてAI や GX などを取り入れたいというものです。すでにメコンデルタ地域で実証実験などを行っている日本のスタートアップ企業も存在していますが、水産や稲作は南部メコンデルタ地域の主要産業であり、大きな事業機会が眠っていると思います。

3.省人化・自動化機械へのニーズ

人件費の高騰は、現時点では喫緊の課題には至っていないと聞く一方で着実に進行しており、今後大きな課題になると思います。また、従業員の定着率の低さも深刻な経営課題と捉えている企業もあります。こうした状況を受け、進出日系企業の中にはこれまでの労働集約的な工程を見直し、省人化・自動化機械の導入を図る動きも出ています。この流れは地場企業においても同様であり、省人化・自動化機械へのニーズは日系・非日系に係らず更に高まっていくものと思います。

 

ご利用いただきたいサービス

先ほど申し上げた 3 つの視点に関連し、 ジェトロのサービスを3 つご紹介します。
協業・オープンイノベーション促進事業 「J-Bridge」
1 つ目は、日本企業と海外スタートアップ企業などとの協業を促進するスキームである「J-Bridge」です 。 当事務所では、J-Bridge 事業の一環としてベトナムスタートアップ企業と日本企業とを個別につなぐ活動を行っているほか、ピッチイベントやマッチングの場も提供しています 。新たな技術やアイデアを取り入れたい企業におかれては、ぜひご活用いただければと思います。
中小企業海外展開現地支援プラットフォーム
2 つ目は、「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」です 。 日本や米国向け輸出の減少などに伴い、新規市場への販路開拓に関心を持つ企業が増えつつあります 。本プラットフォームでは、希望する国・地域に関する市場情報の提供、現地パートナー候補のリストアップ、そして商談アレンジといった各サービスを無料で提供しています 。利用者は中堅・中小企業に限られるなどの条件はありますが、新たな市場開拓の足がかりとしてご利用ください。
製造業および現地調達支援に関する展示会
3 つ目は、展示会への出展支援です 。当事務所では昨年に続き 2026 年も製造業関連の国際展示会に出展し、日本企業の販路開拓をサポートします 。 また、現地調達率を高めてコスト削減を図りたいというご要望もあることから、同展示会内に調達したい日本企業側の出展ブースも設置します。詳しくは、当事務所までお問合せください。ジェトロは 2026 年も、日本企業のベトナムでの事業展開にお役に立てるよう取り組んでまいります 。ぜひお気軽に当事務所までご相談いただければ幸いです。

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