短期効率ではなく全体最適へ ベトナム拠点で考える省人化の本質【Vol.20別冊省人化-2025.9掲載】

ABeam Consulting (Vietnam) Co., Ltd.
Director, Business Unit Manufacturing
大野 宏
Hiroshi Ohno

1. 省人化の本質を捉える:短絡的な自動化の落とし穴

「人を減らす=機械を入れる」と短絡的に捉えることは、省人化・自動化プロジェクトが失敗に終わる典型例です。まず必要なのは、現状の業務プロセスや工場全体のマネジメントスタイルを丁寧に可視化し、課題の全体像を正しく把握することです。属人的に運用されている業務や、データが散在している業務は、いきなり自動化を導入しても期待する効果が出にくく、むしろ混乱を招くこともあります。省人化とは「業務の本質を見直し、持続可能な形で効率化を図る」ことです。全体最適の視点で、長期的な視野を持った改革が求められます。

2. 省人化へのアプローチ:7つのステップで着実に進める

省人化の取り組みを成功に導くには、現場任せや一足飛びの自動化ではなく、戦略的に設計された段階的なアプローチが欠かせません。以下の7ステップが、その基本フレームであり、取り組みを着実に前進させる道筋となります。

1 現状確認(業務・設備・データ・IT)
まずは業務の流れ、設備の稼働状況、活用されているデータ、ITツールやシステムの有無などを可視化・棚卸しします。稼働率、作業時間など非効率の要因を定量的に把握することが重要です。

2 目指す姿の検討
次に、自社の目指すべき姿を明文化します。この「目指す姿」が改革の指針となり、すべての施策の判断軸になります。

3 課題抽出
現状と目指す姿を比較することで、改善余地を整理します。例えば、「業務のばらつき」「ムダな作業」「データ未活用領域」など、課題を具体化していきます。

4 改革ロードマップ策定
抽出された課題を優先度や実現性に応じて整理し、中長期の改革ロードマップを策定します。ここで、小さく始めて効果を検証するための実証実験(PoC)に適したテーマも選定します。費用対効果が明確で、成果が見えやすい領域から着手するのが鉄則です。

5 PoC 実施
選定したテーマで、ツールや仕組みを現場に一部導入し、実環境での効果と課題を検証します。机上の理論にとどまらず、リアルな運用への適合性を見極める重要フェーズです。

6 導入・実行
PoCの結果を踏まえ、ロボット導入、アプリケーション開発、プロセス・オペレーションの再設計といった本格導入フェーズへ移行します。変化の受け入れや定着には、現場との継続的な対話が欠かせません。

7 展開・拡張
導入効果を定量的に評価・分析し、改善点があればチューニングを行います。そのうえで、成果が確認できた取り組みを他のラインや部門、工場へ横展開し、全体最適を図ります。

3 導入を阻む構造的な壁と、突破のための視点

省人化・自動化の導入において、多くの企業が直面するのが「属人化」「非定量的運用」「現場の固定観念」といった現場に根付いた運用上の構造的な壁です。特定の作業がベテラン社員の経験や勘に頼っており、標準化や自動化が困難なケースは少なくありません。さらに、非定量的な運用によって、業務の効率や問題点が数値で把握できない状況も、改善の妨げになります。そして、工場や現場に根強く残る旧来の常識が、新しい技術や改革に対する抵抗を生む要因となっています。

これらを乗り越えるためには、経営トップの覚悟と現場の巻き込みが不可欠です。現場が改革の意義を理解できるように経営トップが明確なメッセージを発し、主体的に関与することで初めて取り組みは実効的なものとなります。また、部門横断的なチームや外部パートナーとの協働体制を築き、客観的な視点と専門性を取り入れることも有効です。何より大切なのは、ロボットやツール導入を目的とせず、業務と組織の再設計から取り組む視点、そして小さくても良いので成功体験を積み重ねていくことです。そうすることで省人化の改革が定着していきます。

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