ベトナムでの賃金マネジメント【Vol.19別冊人材-2025.3掲載】
ASIA GATE VIETNAM Co., Ltd.
代表取締役社長 CEO
豊田 英司
賃金上昇と採用競争の激化
キーワード:
中国からの生産移管/半導体企業の進出
近年、中国の人件費高騰や米中対立のリスク回避から、多くの企業が工場を中国からベトナム北部へ移転しています。この影響で、これらの地域ではワーカー賃金の急上昇が顕著です。さらにインテル、サムスン、エヌビディアといった半導体関連企業もベトナムで拠点を設立・拡大しており、エンジニア人材の獲得競争が激化しています。特にサムスンが工場を設けるハノイ北方のバクニン省やタイグエン省、世界最大手のEMSフォックスコンがAppleの製品群を製造するバクザン省などはサプライヤーも含めて多くの企業が進出しており、北部の港町ハイフォン
市は韓国LGグループが8,800億円もの巨額投資をし、万人を超える雇用を生み出していると言われています。
こういった地域では今後、ますます中国からの生産移転、サプライヤー企業の進出が考えられ採用競争の激化が予想されています。
会社設立前後の人事施策の準備
キーワード:
ベトナムの人事知識の事前準備の重要性
多くの企業が「ベトナムでの人事・賃金施策は人事担当者を採用してから考える」という後手に回る対応をとりますが、これでは採用交渉時に条件が白紙のため、企業側が不利になります。最初の雇用条件が高すぎると、その後の人件費高騰のリスクも高まります。ベトナム法人の設立前からネットや専門家、公的機関を活用して情報を集めれば、就業規則や雇用契約書を準備した上で採用活動を開始することも可能です。できる限り、ベトナムの人事慣習や労働法を学んだ上で法人設立を進めることが重要です。
良い人事担当者の見極めについて「労務」「行政手続」「賃金マネジメント」の経験の有無は目に見えて確認できる部分ですが、それよりも大事で最も見極めが難しいのは「たとえ従業員にとって厳しい人事施策でも、会社のために計画・実行できるか」というところです。ベトナムには日本のような「管理監督者」という概念は法的になく、労働組合にマネジャークラスも加入します。ですので、「会社の側に立って決断する」という存在が確立されておらず、人事マネジャーも「従業員の利益確保」にどうしても意識が傾きがちです。これを面談で見極めるのは非常に難しいですが、過去の経験を聞く中で、「いかに従業員の反対の中、厳しい施策を説得し、実行したか」という部分にフォーカスしてみると、そういった部分の特性が見えてくるかもしれません。
ベトナムでの賃金マネジメント
キーワード:
「率」より「額」、定昇とベアの分離による厳格な管理
ベトナムでは例年、政府が決定する地域別最低賃金(最賃)のアップ率が各企業での賃金マネジメントに大きく影響し、「最賃が7%上がったから我が社の昇給率も全員7%」といったかなりラフな昇給決定をしている企業がいまだに非常に多く、労務費高騰の要因となっています。これに対して、昨今では製造業を中心に以下のような施策を導入し、改善が進んでいます。
①「職種×等級別」の複数の賃金テーブルを作成し、昇給を細かく管理
②昇給を「率」ではなく「額」で運営し、高額給与者のベア率を低減
③各等級の賃金テーブルの上限到達者には定期昇給を停止し、ベースアップのみに限定
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