ベトナムの成長フロンティアへ ― イオンが挑む”ベトナム新中間層”への戦略】【Vol.20-2025.9掲載】
AEON VIETNAM CO., LTD.
AEON Co., Ltd.
Executive Officer- Chief VIETNAM Business Officer
AEON VIETNAM Co., Ltd.
General Director
手塚 大輔 TEZUKA DAISUKE
現地主導で進化する店舗戦現地主導で進化する店舗戦略
イオンがベトナムに1号店を開業したのは2014年。以来、10年にわたり現地市場への深い理解を積み重ね、今では大型モールに加え、住宅地に密着した中小型店など、多様なフォーマットで展開を進めています。現地の変化スピードに対応すべく、出店形態も柔軟に変化させており、いわば「マルチフォーマット戦略」が中核にあります。
注目すべきは、約6000人の従業員のうち日本人は20人前後にすぎず、ベトナム人スタッフが日々の運営・商品開発・販促に主体的に関わっていることです。日本のサービス水準や品質管理をベースにしながらも、ローカルの知見と文化を融合させ、単なる”日本式の移植”ではなく、ベトナム市場に根差した新たな業態開発に挑戦しています。
PB商品の内製化と上流展

ベトナムの小売市場は現在、依然としてトラディショナルトレード (伝統的な市場や個人商店など)が主流で、モダントレード (デパート、モール、コンビニ、EC等)が占める割合は2〜3割にとどまっています。これはタイの6〜7割と比べるとまだ発展途上であり、イオンにとっては成長余地の大きなブルーオーシャンと捉えられます。
市場全体での寡占も進んでおらず、上位10社でのシェアは11%と水準であることから、今後のブランドポジショニングが鍵となります。
加えて、ベトナムが持つ「多様な生産国としての強み」も、イオンにとって大きなアドバンテージとなっています。農産物や加工品を含めた多くの品目が国内で調達可能であり、ローカルサプライヤーとの協業によって、開発・製造段階から商品づくりに関与できる体制が整いつつあります。
これは単なる輸入販売ではなく、ベトナム現地での商品内製化を進めることを意味しており、イオンのプライベートブランド戦略においても重要な柱となっています。たとえば、ドライマンゴーや冷凍果実など、ベトナム産の高品質食材を活用した商品は、日本市場向けとしても実績が出始めており、価格・品質・供給面すべてにおいて競争力の源泉となっています。
イオンは自社ブランド「トップバリュ」などを通じて、商品調達から製造、販売に至るまでサプライチェーンの上流に踏み込み、差別化された価値提供を進めています。品質・安全性・価格のバランスを重視しながら、現地との共創を通じて持続的な競争力を高めています。
“人口✕消費欲”が生む成長ドライバー
ベトナム市場の特筆すべき点は、何より人口構成と経済成長のバランスです。人口は約1億人と日本に匹敵しながら、年齢構成では30歳未満が約5割を占め、消費意欲の旺盛な若年層がボリュームゾーンとなっています。さらに、1人あたりGDPは上昇傾向にあり、いわゆる「新中間層」の台頭が加速しています。
イオンはこうした人口構造と経済発展の段階を総合的に見て、ベトナムをASEAN内でも最重要の戦略市場と位置づけています。
日本の小売市場が約130兆円の規模を持つのに対し、ベトナムは為替や集計方法により30〜40兆円と試算されることもありますが、今後の伸びしろは圧倒的です。
現在のモダントレード比率が2〜3割に過ぎないことから、仮にその比率が日本並みに向上すれば、実質的なモダントレード市場規模は現在の数倍に拡大する可能性を秘めています。
次の5年:変化に応える展開構想
イオンが今後5年間で注力するのは、大きく3つの柱です。
第一に、より多くの生活圏にリーチするための出店加速です。大型モールに加え、中型スーパーや住宅立地型の小型店、コンビニ的機能を持つ店舗など、多様な業態を使い分ける「マルチフォーマット戦略」を推進します。
第二に、先述の通り、商品の独自性と競争力を高めるため、プライベートブランドの開発・製造を現地化する動きを強化しています。
第三に、デジタル分野では、今後の重点領域として基盤整備に取り組み始めています。現時点では、ベトナム国内におけるポイント制度やデータ統合の仕組みはまだ発展途上にあり、グループ全体での取り組みの中でも初期段階に位置付けられています。
今後は、スマートフォンアプリを活用した来店促進や、電子決済の利便性向上といった施策も視野に入れ、現地の若年層を中心とするスマホ世代への対応を進めていく方針です。日本国内での成功事例も参考にしながら、現地に合った形での実装を模索していく段階にあります。
次の5年:変化に応える展開構想 地域との共創・ESGの取り組み
イオンはベトナムにおいて、小売業としての機能を超えて、地域社会の発展に貢献する企業としての役割を明確に打ち出しています。各地での出店にあたり、雇用創出・地場農産物の販売支援・災害時の支援物資供給など、多様な形で地域と共に歩む姿勢を貫いています。
例えば、農産物や加工品を現地サプライヤーと協力してPB化し、品質向上と販路拡大を支援する取り組みは、生産者の所得向上にも寄与しています。また、防災拠点としてのモールの役割や、大学との連携による人材育成、スポーツ大会など地域イベントの主催も積極的に行い、「地域に根ざした存在」として認知されつつあります。
単なる「外国企業」ではなく、「ベトナムの仲間」として地域社会に受け入れられることを目指し、ESG経営を推進しています。
PROFILE
1975年生まれ。2002年イオンクレジットサービス入社 06年イオン総合金融準備(現イオン銀行) 07年同社企画部統括マネージャー 11年イオン戦略部、14年戦略部長 16年ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス (U.S.M.H)代表取締役 17年マックスバリュ関東代表取締役社長 19年U.S.M.H代表取締役副社長 21年イオン物流担当、22年3月より現職
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