トヨタベトナム 次の30年を見据えた工場刷新とHEV現地生産
大型投資で進める生産・供給体制の刷新
トヨタベトナムは昨年、創業30周年を迎え、次の成長フェーズに向けた生産・供給体制の刷新を進めています。昨年発表した約3億6,000万米ドル規模の投資では、既存工場の主要設備刷新に加え、ベトナムでは当社初となるハイブリッド車(HEV)の現地生産を計画しています。今回の取り組みは単なる設備刷新ではなく、ベトナム市場の成長、環境対応ニーズ、そして現地化の進展を見据えた「次の30年」の基盤づくりです。
1995年の進出以来、当社は政府、販売店、サプライヤー、工場のあるフート省、そして地域社会の皆様に支えられながら事業を展開してきました。これからの30年は、ベトナム市場の変化に対応しながら、より地域に根差した会社へ進化していく段階だと考えています。
今回の投資で象徴的なのが、HEVの現地生産です。ベトナムでは、都市部を中心に環境対応への意識が高まり、カーボンニュートラルに向けた取り組みも加速しています。一方で、現在の充電インフラや利用環境を踏まえると、充電を必要としないHEVは、現時点でカーボンニュートラル実現に向けた現実的な選択肢の一つです。
もちろん、最終的にバッテリー電気自動車(BEV)やHEVなど、どのパワートレーンを選択するかはお客様次第です。ただ、米国駐在時にも、BEV市場の拡大が電動車全体への理解を広げ、結果としてHEVへの関心も高まる変化を感じました。ベトナムでも、2026年1月からHEVに対する特別消費税(SCT)の優遇措置が始まり、価格競争力の向上とともに市場の反応も変化しています。前年には1割程度だったHEV比率は、足元では3割近くまで拡大しています。
一方で、今回の投資はHEV導入だけを目的としたものではありません。30年間稼働してきた既存工場の塗装設備やプレス機など、主要設備全体の刷新も進めています。これまでのベトナム工場は、少量多品種生産に柔軟に対応する、熟練技能を活かした工場として発展してきました。世界的にロボット化が進む中でも、熟練工による手作業や日本式の「からくり改善」を活用した独自の生産文化を維持してきたことが特徴です。
今後は新技術導入に伴い、徐々にロボット化も進めていきますが、全面的な自動化へ一気に移行する考えではありません。ベトナム人材の器用さや勤勉さは大きな強みであり、「知恵と工夫を活かす文化」は今後も大切にしていきたいと考えています。
また、今回の刷新では新社屋の建設も計画しています。現在は販売機能や、販売店スタッフ向けトレーニング機能などが分散していますが、今後は本社機能、サービス・トレーニングセンターなどを集約し、販売、サービス、製造部門がより密接に連携できる体制を構築します。市場ニーズへの対応力向上に加え、人材育成や部門間コミュニケーション強化にもつなげていきます。さらに、作業者の負荷軽減や働きやすい環境づくり、ソーラーパネル設置など環境配慮型設備の導入にも取り組み、工場としての競争力と持続可能性の両立を図っていきます。
成長市場ベトナムへの長期コミットメント
今回の大型投資の背景には、ベトナム市場に対する高い成長期待があります。東南アジア各国の中でも、ベトナムは人口構成の若さ、高い経済成長率、自動車普及率の低さなどから、今後も大きな成長余地がある市場だと考えています。
現在のベトナムは、大型商業施設が次々と建設され、若いファミリー層も多く、消費に勢いがあります。東南アジア各国と比較しても、ベトナム市場については前向きな議論が非常に多い印象です。
また、VinFastが積極的にBEVを展開していることも、市場拡大に大きく寄与していると感じています。低価格帯BEVにより二輪車から四輪車への移行が進み、自動車市場そのものが活性化しています。
市場が拡大する局面では、単に完成車を供給するだけでなく、現地で生産し、現地のニーズに合わせて迅速に商品・サービスを提供できる体制が重要になります。当社としても、ベトナム市場へ長期的にコミットする姿勢を明確に示す必要があり、今回の投資はその意思表示でもあり、将来の需要拡大に対応するための基盤整備でもあります。
ベトナムに根差す経営体制へ
経営体制についても大きな変化がありました。従来は日本人が会長兼社長を務めていましたが、新たにベトナム系のハオ氏が会長に就任しています。
ハオ氏はシンガポールを拠点とし、アジア地域の副本部長も担っており、ベトナム社会や行政とのコミュニケーション強化を期待しています。一方、私は社長として、販売、生産、原価改善などのオペレーションを現場で日々見ています。ベトナム系会長と日本人社長がそれぞれの役割を担うことで、よりベトナムに根差した会社へ進化していきたいと考えています。
将来的には、ベトナム人リーダーたちが主体となって会社を運営していく形を目指しています。そのためにも、人材育成は今後非常に重要なテーマになります。
ベトナムをアジア太平洋地域の重要拠点へ
アジア太平洋地域全体の中でも、ベトナム拠点の重要性は今後さらに高まると考えています。これまで東南アジアではタイやインドネシアが主要生産拠点でしたが、ベトナムは自動車市場の成長が著しく、現調化の推進と共に、将来東南アジアの次なる拠点の可能性を感じております。
弊社のベトナム工場には、熟練技能を活かした独自の生産文化が残っています。少量多品種に対応してきた経験や、現場の知恵を活かした改善力は、今後も大切にすべき強みです。ベトナム拠点には、生産機能だけでなく、技能伝承の拠点としての役割も期待しています。
一方で、現状ではタイやインドネシアから輸入している部品も多く、物流コストはベトナム生産の競争力を左右する課題です。中には、ベトナムで製造された部材が一度タイやインドネシアへ送られ、加工後に再びベトナムへ戻ってくるケースもあります。こうした工程をできる限り国内で完結できるよう、現地調達率の向上とサプライチェーン再構築の検証を進めています。
ただし、自動車部品生産には大きな投資が必要になるため、販売台数の拡大と投資回収のバランスを慎重に見極めながら取り組んでいきます。
TPS で育てるベトナムのものづくり基盤
現地調達率向上に向けて、当社ではTPS(トヨタ生産方式)を活用した現地サプライヤー育成にも力を入れています。これは単なる品質指導ではありません。専門チームが現地サプライヤーの工場へ直接入り込み、工程配置の見直し、作業順序の最適化、人員配置の改善、治具の工夫など、現場に即した改善を伴走型で進めています。
例えば、工程の順番を変更することで作業効率を高めたり、治具を工夫することで必要な人員を減らしたりすることができます。こうした具体的な改善提案を通じて、生産性向上と品質安定化を支援しています。
さらに、改善活動は既存の取引先への支援にとどまりません。商工省(MOIT)及びフート省と共に裾野産業育成の一環として、有望なベトナム企業を発掘し、新たな調達先として育成する役割も担っています。自動車産業では、単に部品を製造できるだけでは十分ではなく品質、納期、原価管理を高水準で維持できるサプライチェーン全体の成熟が求められます。その意味で、TPSを活用したサプライヤー育成は、単なる部品現調化ではなく、ベトナム国内にものづくり基盤そのものを育てる取り組みだと考えています。本取り組みは、2022年から発足し、累計54社に実施させていただきました。
競争激化の中で磨く「安心」という価値
競争環境については、VinFastはベトナムのローカルメーカーとして低価格帯BEVを市場に供給し、自動車市場全体を拡大させています。現時点では直接的な競争相手というより、ともに市場成長を牽引する存在だと見ています。
その中で、当社として重視しているのは「品質、耐久性、信頼性」です。日本車、そしてトヨタ車であれば安心できるというブランド価値を、引き続き提供していきます。加えて、HEVはじめ、お客様のニーズや地域のエネルギー事情に合わせ、様々な選択肢を提供するフルラインアップメーカーであること、そして30年間築いてきた販売・サービスネットワークも大きな強みです。
今後は、①環境規制などへの柔軟な対応、②現地化を含めたコスト競争力の強化、③ベトナム人材の育成を重視していきます。最終的には、全ての従業員が自社の車を気軽に購入できるようになってこそ、本当の意味でのモータリゼーションが実現すると考えています。ベトナム社会の成長とともに、当社もさらに発展していきたいと考えています。
【企業情報】
TOYOTA MOTOR VIETNAM
Headquarters & Factory: Phuc Yen Ward, Phu Tho Province, Vietnam Ha Noi Branch: 8th Floor, Lotte Center Hanoi Building, 54 Lieu Giai, Cong Vi Ward, Ba Dinh District, Hanoi, Vietnam
Tel: +84 (0) 211 3868 100
https://www.toyota.com.vn/
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