<非日系取引拡大の要となるか?>中国語・韓国語・多言語話者採用【Vol.19別冊人材-2025.3掲載】

Talented Company Limited
代表取締役 CEO
越前谷 学

ベトナムにおける多言語話者の需要と採用の現状

ベトナムでは、多言語話者の需要が年々高まって おり、特に中国語や韓国語を話せる人材への注目が 急増しています。この背景には、非日系企業の進出 が進み、取引先として中国系や韓国系企業が増えて いる現状があります。特に中国語人材の需要は顕著 で、求人市場において韓国語人材の 4 倍に相当する とされています。これに対し、日本語人材の求人数 は韓国語人材の約2倍に留まっています。

中国語人材が求められるのは、主に北部の工業団地や製造業が集まる地域です。こうした地域では、中国企業が工場を運営しており、現地従業員や取引先とのコミュニケーションを円滑に行うために、中国語を話せるベトナム人の採用が必須となっていま す。一方、韓国語人材の需要は比較的限定的で、給与水準は高い傾向にありますが、求人数は中国語人 材ほど多くありません。韓国企業は英語での業務遂行を重視する傾向があるため、英語能力が優先され るケースが多いです。

多言語話者の採用がもたらす課題

多言語話者の採用には、言語スキルだけでなく、 業務における実務能力や社内文化との適応力も求められます。例えば、日本企業が中国語とベトナム語のみ話せる人材を採用する場合、指示を出す側が日本語や英語しか話せないといった問題が生じます。 このため、こうした人材を活用するにはマネジメントができる現地スタッフを配置し、管理業務を委ね る柔軟な体制が不可欠です。 また、中国語人材を必要とする業種として、最近 では製造業や工業団地内の管理職に加え、金融・監 査法人、さらには物流業界も挙げられます。例えば、 国際的な金融機関やコンサルティングファームでは、 中国語を話せるベトナム人をリレーションシップマ ネージャーやアカウントマネージャーとして採用し ています。こうした役割では、クライアントとの信頼関係を築くため、言語スキルと文化理解が特に重 要視されています。

一方、韓国語人材の需要が高い業界は、主にIT や エレクトロニクス分野です。韓国企業はスピードを 重視する文化があり、通訳を介するよりも、英語や 韓国語を直接話せる人材を優先する傾向があります。 ベトナム人日本語話者が、母国語と日本語のバイ リンガルであるのと同様に、中国語・韓国語話者も 当然バイリンガルです。中国語話者で英語も話せる トリリンガルとなると、人材の母数が大幅に減り、 採用難易度は増していきます。

また日系企業での勤務を希望する日本語人材は、 日本の文化が好きと言う理由から日本語を学ぶこと が多く、日本の商慣習や働き方についても比較的受 容性が高い可能性はありますが、他国言語を学ぶ人 材は受容性を持ちえない場合もあります。 具体的な例では、中国語話者に、日本的商慣習や働 き方の教育を行った場合、受容しがたく、十分に能 力を発揮できないまま離職につながるケースがあり ます。また年齢が若くても評価において優遇される ことにより、ベトナム人同士の軋轢が生まれること もあります。

競争力向上のための取り組みと方向性

ベトナムでの競争力を維持・向上させるための多 言語話者採用には以下の施策が求められます

現地適応型の管理・評価制度の導入 

日本の一律な管理制度ではなく、現地文化や労働 市場の特性に応じた制度が必要です。具体的には、 日本の終身雇用に基づいた人事・評価制度ではベト ナムのような新興国の昇進・昇給スピードには合致 しません。例えば、私が代表を務めていた企業では、 日本の評価制度を参考にしながらも、現地に合わせ た評価軸、時間軸にし、パフォーマンスベースの評価制度を導入することにより現地従業員の満足度を高め、エンプロイーエクスペリエンスの向上に努めて参りました。

多様な働き方の推進

 ベトナム人の働き方に合わせた柔軟な管理体制を 整えることが求められます。日本の雇用制度は、新卒一括採用が一般的であり、ジョブローテーション によりゼネラリストを育成する総合職採用が主流で す。翻ってベトナムでは、よりグローバルな働き方 が好まれ、スペシャリストとして専門性を身につけ ることが優先されます。日本の人事制度に固執する ことなく、専門性を磨ける柔軟な環境を提供するこ とが重要です。

まとめ

多言語話者の需要増加は、ベトナム市場の変化を 象徴しています。特に中国語人材の需要は年々高まっ ており、製造業や金融業界をはじめとするさまざま な分野で欠かせない存在となっています。採用だけ ではなく、定着、活躍までを考え、従来の日本型 マネジメントではなく、専門性を生かせる人事制度 や組織作りが必要となります。 また、日本企業の強みを活かした研修制度の導入 は、多言語人材だけでなく、多くの社員の定着・活 躍につながる一手となります。 多くの課題を乗り越え、競争力を維持するために は、日本企業の柔軟な対応と現地に合わせた管理手 法の導入が今後より求められていくでしょう。

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